CURATION
2025/07/22
不動産投資提案研修 空室になったら?家賃下がったら?不動産投資の最大リスク「空室・家賃下落」への切り返しトーク
こんにちは、RE/MAX Revoの安川です。
今回は、投資物件をお客様に提案する不動産営業マンや不動産エージェントの方向けに、「空室になったら?」「家賃が下がったらどうするの?」というお客様の不安に対して、どう切り返すべきかを解説します。
営業として自信を持って不動産投資を提案できるよう、ぜひ参考にしてください。
空室リスクと家賃下落リスクは不動産投資の本質
不動産投資で最も大きなリスクは「空室」です。
家賃収入が入らなくなり、売上がゼロになります。これは収益構造上、最も避けたい事態です。
そして空室が続けば、当然家賃を下げてでも入居を確保することになり、「家賃下落リスク」にもつながっていきます。
最初に伝えるべきは、「空室と家賃下落のリスクは、確実に存在する」という事実です。
しかし、どんな投資・どんな事業にもリスクはつきもの。重要なのは、そのリスクがどこまで想定されるのか、どのように制御・対策できるのかという点です。
少子高齢化は避けられないが、それだけでは語れない
日本は少子高齢化が進み、人口が減っていくことは目に見えています。これは避けられない事実です。
しかし、同時に避けられないもう一つの傾向があります。
それは「都心部への一極集中」と「単身世帯の増加」です。
これは、雪山で遭難したとき、手足の指先から凍傷になるのと同じです。
人間の体も、国も、中心部は最後まで守られます。先に壊れていくのは、末端から。
つまり、国としても人口が少なく、経済規模が小さい地方から衰退していくことは明白です。
だからこそ、都心の単身向け物件ほど空室リスクが低く、郊外のファミリー向け物件ほど空室リスクが高いのです。
人口動態は「読める未来」|都心部の安定性
「不動産投資は先が読めない」とおっしゃる方もいますが、人口動態は株価よりはるかに予測しやすい領域です。
たとえば、
- 東京であれば「23区」
- 九州なら「福岡市」
- 北海道なら「札幌」
- 関西では「大阪市」
- 中部では「名古屋市」
このような政令指定都市の中心部が、急激に人口減少することは考えにくいのです。
特に福岡市であれば、「博多」と「天神」という二大エリアが圧倒的な中心地であり、これらのエリアから大きく外れなければ、空室や家賃下落の影響を大きく受けることはありません。
人工的に膨らんだ経済圏は危うい
都市以外の地域で、人口が増えるケースももちろんあります。
大きな工場、大学、リゾート施設の新設などがその例です。
しかし、これは「人為的に膨らんだ需要」であり、撤退時には深刻なダメージを伴います。
たとえば、神奈川県・横須賀市にある日産の追浜工場。
閉鎖によって3,000~4,000人の雇用が失われ、1,600世帯分の住宅需要が蒸発しました。
その結果、賃貸市場では空室が急増し、1Kの家賃が2万円台まで下がる可能性も報道されています。
こうした事例は「撤退が地域全体の不動産価値を大きく下げる」というリスクを如実に示しています。
杵築市の実例:家賃1,000円の世界
実は大分県杵築市でも、同様の事例が起きています。
かつて「テクノポリス構想」により、キャノンの工場が進出。市を挙げて賃貸住宅の建設ラッシュが起き、地主たちはJA融資を受けてアパートを建てました。
しかしリーマンショックを契機に、
- 派遣社員の大量解雇
- 法人による一括借り上げ契約の打ち切り
- 賃貸需要の一瞬の蒸発
街は“空室地獄”に突入しました。
家賃は4万円 → 3万円 → 1万円 → 最終的には「家賃1,000円+管理費3,700円」という信じられない水準まで下落。
「住めば無料」どころか「お小遣いがもらえる」ような異常な状況すら生まれました。
市は雇用対策として臨時職員を雇ったり、家賃補助を出したりと必死に支援しましたが、抜本的な解決には至らず、現在も借り手のつかない“家賃1万円アパート”が残っています。
都心近接なら、逆にプラスに働くケースも
一方、同じ「施設の移転」でも、都心に近ければ話が違います。
福岡市の九州大学・箱崎キャンパスが郊外の糸島に移転した際、
「箱崎の地価は下がる」と思われていましたが、現実は逆でした。
再開発が進み、今や福岡市内でもトップクラスの地価上昇を記録しています。
これは、都心近接エリアには“再生と成長のチャンス”が常にあるからです。
一方、新キャンパスができた糸島では、土地が余っており、アパートが乱立。
いくらでも建てられる環境では、需給バランスが崩れやすく、将来リスクも否定できません。
家賃は「下げ幅がある」方が強い
家賃は需給バランスで決まります。
30㎡で家賃20万円の物件が空いたとしても、19万円、18万円、17万円…と調整すれば、
必ずどこかで決まります。
一方、家賃3万円の物件では、2万円にしても決まらない。1万円にしてやっと、というケースもあります。
これは「下げられる余地があるかどうか」が大きなポイントになります。
たとえば、メルカリで300円の商品は売れませんが、100万円の時計なら90万円でも売れます。
この“価格に下げ幅がある”というのは、実は不動産でも大きな強みなのです。
家賃が「下がる」と思っているのは日本人の誤解
「家賃は築年数が経つと下がる」と考えている方が多いですが、これは必ずしも正しくありません。
福岡市中央区のデータによると、直近3年間で賃貸マンションの家賃は平均で約10.78%上昇しています。
なぜか?
それは「世界は基本的にインフレする」からです。
国の首脳が「デフレにしたい」と思っている国などありません。
建築資材は高騰し、職人の人件費も上がり、工期も延び、物流も値上がりしています。
当然、不動産の建築コストは年々上がり、新築の家賃も上がる。
それに引っ張られる形で、築年数が経っていても家賃は底堅く推移するのです。
比較すべきは「横」ではなく「縦」
「新築は10万円なのに、隣の築10年の物件は8万円。だから家賃は下がる」と言う人がいます。
しかしこれは横比較にすぎません。
比較すべきは「同一物件の経年変化=縦比較」です。
築10年の物件が、新築時いくらだったのか、築5年でいくらだったのか、築20年でいくらなのか。
レインズやフレンズで確認すれば、家賃は大きく下がっていないことが分かります。
実話:築50年の物件で家賃が上がっている
私が10年前に住んでいた、東京都渋谷区・笹塚駅前の築50年以上の物件。
当時の家賃は9万円でした。
ところが先日、後輩と話していたら、同じ物件に住んでおり、家賃は「13万円」とのこと。
築年数が増えても、家賃は下がらず、むしろ上がっているという実例です。
家賃が安すぎると“工夫の余地”がなくなる
築古で家賃が極端に安いと、トイレやキッチンを入れ替えるなどのリフォームをしても費用対効果が見合いません。
収益性のあるエリアであれば、工夫の余地もある。
逆に、家賃が低すぎるエリアでは、そもそも打ち手が限られてしまいます。
サブリース(家賃保証)は本当に安心か?
サブリースがあるから安心、と思われる方もいますが、注意が必要です。
- 借地借家法の適用外
- 管理料が10〜15%と割高
- 将来的にサブリース契約が打ち切られる可能性も
しかも、サブリースが成立するのは「良い立地」の物件だけ。
つまり、リスクが低いからこそ保証できるという仕組みなのです。
であれば、自分で運用し、5%でも家賃を下げて貸す方が収益は安定します。
今の賃貸市場は“空室ゼロ”が当たり前
近年では「入居率99%」と謳う会社もあります。
「さすがにそれは盛りすぎでしょ?」と思うかもしれませんが、事実として、退去前に申込が入るのが今の賃貸市場のトレンドです。
人気物件は内見なしで決まることも多く、SUUMOなどのポータルサイトで見ても、「空室」は少なく「退去予定」が主流。
これは、360度パノラマ、オンライン申込、IT重説、LINE対応など、賃貸のデジタル化が急速に進んだことによるものです。
正しい知識と前向きな姿勢でお客様と向き合おう
最後に。
我々営業マンが自信を持てない商品は、お客様にも響きません。
もちろん、「絶対に大丈夫」「絶対に儲かる」という無責任なセールストークは避けるべきですが、
数字、事実、原則に基づいた正確な知識を持ち、前向きな姿勢で提案することが、信頼につながります。
まとめ
- 空室・家賃下落リスクは存在するが、制御可能
- 都市部・単身世帯向け・価格に余地のある物件が安定
- 人口動態・インフレ・建築コスト・需給を根拠に説明する
- 営業マン自身が商品を信じ、誠実に提案することが成約の鍵