CURATION
2025/07/18
【不動産×節税】本当に節税になる?知っておくべき仕組みと「誤解」の正体
「不動産投資で節税できる」と聞いたことはありませんか?
実際、不動産を使った節税スキームはよく知られていますが、メリットばかりが強調されているケースも少なくありません。
特に、給与所得が高いサラリーマンや、個人事業主の方の間で、「減価償却で赤字をつくって税金を取り戻そう」といった考え方が広がっています。
しかし――
本当に“節税”はそんなにお得なのでしょうか?
そして“不動産投資の本質”は節税にあるのでしょうか?
本記事では、不動産投資における「節税」の仕組みとその落とし穴、そして長期的に見た資産形成戦略のあり方について解説します。

節税には「2つの種類」がある
まず、不動産を活用した節税には大きく分けて2種類あります。
1|資産に対する節税(相続・贈与・株価対策)
個人であれば相続税の対策、法人であれば自社株評価の圧縮など、次世代に資産を引き継ぐ際の税金を軽減するための節税です。
例えば現金1億円をそのまま保有していれば1億円として評価されますが、それを不動産に変えておくと、評価額を時価よりも大きく下げられる(相続税評価額で土地や建物が算定される)ため、相続税の課税対象を圧縮できます。
このように、相続や事業承継の場面では不動産が極めて強力な武器になります。
2|所得に対する節税(給与・事業収入の圧縮)
もうひとつは、「所得税」や「住民税」を下げることを目的に、不動産から発生する“減価償却”などを活用して、帳簿上の赤字を作る節税です。
特にこんな方が対象になります:
- 年収が高いサラリーマン
- フリーランス・個人事業主
- 黒字の法人経営者
一見してお得なように見えるこの「所得の節税」ですが、注意点がいくつもあります。
本記事ではこの所得に対する節税の解説と注意点についてお話します。

減価償却による赤字は「節税」か「先送り」か?
多くの節税系YouTubeやブログでは、「築古の木造戸建を買って4年間で償却すれば、数百万円の節税になる」といった事例が紹介されています。
これは制度上、確かに正しいです。
例えば築22年以上の木造住宅であれば、法定耐用年数の20%=4年で減価償却可能。建物価格1,200万円なら、毎年300万円を経費として落とせるわけです。
しかし、それはあくまで帳簿上の赤字。
実際には家賃収入があり、ローン返済があり、キャッシュフローもある。その中で「税金だけが軽くなる」という一時的な恩恵に過ぎません。
節税の「代償」は大きい|すぐに次を買わないと意味がない
短期的に節税効果が大きく見える築古物件投資ですが、次のような課題がつきまといます:
- 4年で償却が終わると節税効果がなくなる
- 常に新しい物件を買い続けなければならない
- 築古物件は空室リスク・修繕リスクも高い
- 売却時に減価償却した分が課税対象になる
特に注意すべきは、売却時の「譲渡所得」です。

売却時にかかる税金は「40%近い」ことも
不動産を売却した時の税率は、保有期間によって大きく異なります。
- 保有期間5年以下 → 約39.63%(短期譲渡)
- 保有期間5年超 → 約20.315%(長期譲渡)
つまり、「節税した分のツケがあとで来る」わけです。
減価償却した分だけ帳簿価格が下がるため、売却益が大きく計上されて、今度は高率の税金を支払うことになります。
また、不動産の売却には以下のような実費コストも発生します。
- 仲介手数料(約3%+6万円)
- 登記費用・司法書士報酬
- 売却時の契約書印紙代
いずれも「経費計上はできても、実際に現金が出ていく」ので、キャッシュ的にはマイナスになることを忘れてはいけません。

所得の節税は「おまけ」と考えるのが正解
もちろん、節税は悪いことではありません。
- 減価償却を活用して初年度の所得を下げる
- 損益通算で還付を受ける
- 家族を役員にして給与所得を分散する
こういった戦略は有効ですが、それが投資の目的になってしまうと本末転倒です。
不動産投資は、あくまで「資産形成」の手段であり、節税はその中で「副次的に得られるメリット」と捉えるべきです。
長期的には「納税が増える」のが普通
不動産投資が事業として成り立っていれば、いずれ黒字になります。そして、黒字になれば当然ながら納税が発生します。
つまり、長く不動産を持てば持つほど、節税よりも納税のフェーズに入っていくのが普通です。
だからこそ、短期的な“節税効果”に飛びつくのではなく、
- 「資産の拡大」
- 「キャッシュフローの安定化」
- 「入居率の維持」
- 「適切なタイミングでの売却」
といった本質的な視点で、不動産経営に取り組むべきです。
まとめ|節税より「資産形成」こそが王道
✅ 不動産投資には節税効果があるのは事実
✅ ただし、減価償却による節税は一時的であり、将来の納税を先送りしているにすぎない
✅ 節税目的だけで築古物件を買い漁るのは危険
✅ 本来の目的は“資産形成”であるべき
✅ 適切な物件選びと長期的な視野を持って、不動産を活用しよう
「節税」だけで不動産投資を語るのは、ダイエットを“水だけで痩せる”と言っているようなものです。
健康的に、継続的に、安定して資産を増やしていく――
そのために不動産をどう活用するかを考えることが、本当に価値ある投資につながります。